考える、のススメ(別館)

大学1年の中学受験塾の講師を皮切りにいつしか指導歴28年。普段の授業で気づいた事などを綴っています。

良い絵本と、内容を要約している絵本

今日は朝から図書館で、本選び。

私が監修している「小学生に国語を教える塾」で使用する本の選定です。

同じタイトルの本でも、文章に差があるので、中身をよく確認しなければ

なりませんグー


私があっくんにと買った絵本の中で、作者にひかれて中身をよく確認しないで

失敗した絵本があります。


ママお話きかせて やさしい心を育てるお話編/小学館
¥2,570
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(お話の種類が多いので、レビューは高いのですが・・・)

この「ももたろう」の本の書き出しは、次のようにはじまります。

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 とんとむかし。

 あるところに、じいさまとばあさまがおったと。

 じいさまは、山へしばかりに行き、ばあさまは川でせんたくをしておった。

 そこへ、川上から、大きなももが、つんぶりこんぶりと、ながれてきた。

 ばあさまはよろこんで、家にもって帰った。

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でも、こちらの本にのっている「ももたろう」は、同じシーンが次のように書かれています。

ももたろう (日本傑作絵本シリーズ)/福音館書店
¥1,188
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 むかし、あるところに、おじいさんとおばあさんが すんでいました。
 
 おじいさんは やまへ しばかりに、おばあさんは かわへ せんたくに ゆきました。

 あるひ、おばあさんが かわで せんたくをしていると、 かわかみから、ももが

 つんぶく かんぶく つんぶく かんぶくと ながれてきました。

 おばあさんが ひろって たべてみると、 なんともかとも おいしい ももでした。

 「なんとも うまい ももっこだ。おじいさんにも、もってってあげたいが・・・」

 そうおもって、おばあさんが、

 「うーまい ももっこ、 こっちゃこい。 にーがい ももっこ、あっちゃゆけ」

 というと、おおきい うまそうな ももが、おばあさんのほうへ ながれてきました。

 「これまた うまそうな ももっこだ」と、おばあさんは ひろって うちへ もってかえり、

 だいじにしまいこんでおきました。



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つまり、同じ話のものでも、「ママ お話きかせて」の方は、気持ちの描写が少なく、

ストーリーを要約しているのです。

どうして、おばあさんはももをひろったのですか? という質問があったら、

前者の
「ママ、お話きかせて」だと

「ももが流れてきたから」


になりますが、後者の
「ももたろう」は、

「ながれてきたももをひろって食べたら、とてもおいしかったので、おじいさんにも

食べさせてあげたいと思ったから」


になります。

前者の「ママおはなしきかせて」は、行間から

「おじいさんにも食べさせてあげたいと思ったから」と

答えられるかもしれませんが、国語の問題として採点する場合、この解答だとバツです。

本文に「食べさせてあげたい」と書かれていないし、ももを拾ったのは、ひょっとしたら

「川から流れてきたのが珍しかったので、おじいさんに見せたかったから」

かもしれないし、

「モモが『私を食べて!』と話かけてきたので、拾ったから」

かもしれないし、いかようにも解釈が出来るからです。

なので、国語の問題として、行間から勝手に解釈して「食べさせてあげたい」と答えては

いけないのです。

行間から想像して、自分の解釈を意見として言えることは、それはそれとして大切なのですが、

その能力は「読書感想文」に発揮してください。

ただ、今必要なのは、ストーリーを要約して有名な話を読み聞かせることではなく、細かい

描写や気持ちの動きを伝えることではないでしょうか?

ということで、残念ながら私はこの本は子どもの読み聞かせには使わないことにしました。


もっとも、目次から「やさしい心育てるお話」には、どういった種類のものが良いのか、

本選びの参考にはなりましたので、その点では買って良かったな、とは思います。

本選び、ちゃんと中身見ないとなかなかわからないもんですね。